中国のR&Dシステムとフランスとの関係

Dossier pays
フランス: 科学技術観測所(OST):L'Observatoire des sciences et des techniques;
2007年6月14日、科学技術観測所(OST)は、OSTと外務省の連署による標記文書(2006
年12月付け)を公表した。
その結論部分を要約して以下に記す。
1) 25年前までは科学技術小国であった中国は、科学技術において急速に進歩を遂げている。科学技術省(MOST)が改革の主たる牽引役を果たしており、科学技術を中心に据えた持続的な経済成長と2020年には世界のR&D・イノベーション主要国入りを目指している。
2) 改革は主として次の4つの軸に関するものである。
・科学技術の組織機構とその資金調達方法に関する改革
・科学技術に割り当てる財源・人材の強化
・上記財源・人材を限定された機関や優先テーマ分野に集中
・中国の科学技術を世界に開示
3) 改革はソ連をモデルとした研究システムに欧州モデルのシステムを重ね合わせることから始まった。つまり研究資金は能力に応じて割り当てられ、主として応用研究、ハイテクの開発、イノベーションに関する奨励プログラムを通じて配布される。一方、大学はその活動範囲が拡張され、学術システムに加えて技術の研究開発に関わることになった。
4) 中国のR&D支出は日本、米国に次ぐ世界第3位(2006年末はおそらく第2位)。2003年以降世界のR&D支出の10%を占める。
1998年以降年当たり15%の伸びを示してはいるが、中国の国内総生産(GDP)に占める国内研究開発支出の割合は2004年時点で1.23%で、米国(2.68%)、日本(3.15%)、EU(1.82%)にはまだ及ばない。
5) 2004年には115万人がR&Dセクターで働いており、そのうち研究者は920,000人以上。中国は米国に次いで重要なR&Dの人的資源保有国である。
6) 上記方策の適用は、十分な能力を有し政府が指定した優先テーマに合致する研究活動を行える、特定の研究所等に集中している。このような研究所等はまだ数が少なく(主要研究所163、大学が数十校)、中国東部に集中している。
7) 中国のR&D施策は主として応用研究と技術開発を究極の目標としているが(基礎研究に対しては国内研究開発支出のわずか5.7%)、科学雑誌掲載記事数でみると、世界の科学記事に占める中国の割合は5年間で倍増しており、2004年には世界第5位となっている。世界の科学記事の5%以上を占め、米国、日本、英国、ドイツに次ぎ、フランスより上位に位置する。ただしインパクトファクターは0.5で世界水準より低く国際的知名度はまだ低い。
8) 欧州や米国特許庁で中国発の特許の量をみると、国際的場面での中国技術の展開はまだ限定されている。2001年以降本格的な登録が始まり、2004年には欧州特許出願件数の0.9%(約1200件、1999年から204%の伸び)、米国特許の0.4%(約630件、1999年から125%の伸び)。
9) 中国はアジアの近隣諸国との協力関係を展開している。日本はさておき、中国にとって第2の相手はシンガポール、韓国、台湾で、これらの国全体で中国の国際共同出版の10%以上を占める。またオーストラリアやカナダとも関係強化を進めている。
10) 中国の研究政策に対するEU諸国の動きは遅かったが、ここ数年EUプログラムや世界規模のプログラム(ヒトゲノム、ガリレオITERなど)に中国を参入させる動きが明確になってきた。
11) 欧州では独英仏3カ国が中国の協力相手国の上位10位内に入っている。フランスは中国の科学技術協力相手国としては7番目で、中国の国際共同出版の7%。ドイツ、英国よりずっと少ない。またフランスからみると、科学技術協力相手国として中国は16番目。
12) 教育分野では、仏中両国の高等教育機関間の連携が強化され、フランスは中国の留学生受け入れ国として6番目となっている(米国、英国、日本、オーストラリア、ドイツに次ぐ)。
デイリーウォッチャー(2007年 8月 2日更新)


大阪府立大学、2006年度の外部獲得資金は38%増の約28億円
大阪府立大学はこのほど、2006年度の外部獲得資金が27億9000万円に達したことを本事務局の取材に対して明らかにした。「民間企業との共同研究や受託研究が大きく伸びた」(大阪府立大学の菅野昌志理事・産学官連携機構長)ことから、2005年度実績の20億2000万円から38.1%伸び、金額ベースで7億7000万円増となった。
大阪府立大学の2006年度外部獲得資金27億9000万円の内訳をみると、(1)共同研究費:6億6300万円(2)受託研究費:7億7700万円(3)奨励寄付金:2億2700万円(4)科学研究費:8億8700万円(5)その他補助金21世紀COEプログラムなど):2億3600万円――となっている。このうち共同研究費は2005年度の3億5500万円から86.8%増、受託研究費は同3億6700万円から111.7%増となっている。
「外部獲得資金の全体件数は2005年度の909件から2006年度の978件に7.6%伸びたが、1件当たりの金額が大きくなったことから、金額ベースで38.1%増となった。最近では1億円を超える案件も出てきた」(大阪府立大学の菅野理事・産学官連携機構長)。
2006年度の共同研究を分野別でみると、(1)ナノ・材料:30%(2)ライフサイエンス:23%(3)製造技術:12%(4)環境:7%(5)情報通信:6%(6)エネルギー:3%――となっている。
同様に受託研究でも、(1)ナノ・材料:23%(2)ライフサイエンス16%(3)製造技術:10%(4)環境:10%(5)情報通信:8%(6)エネルギー:1%――となっている。
「共同研究と受託研究が外部資金獲得面で“両輪”として機能し始めた。もともと“実学指向”が強い地域密着型の大学だったが、公立大学法人化後に教員の意識が大きく変ってきた。補助金の申請書作成やプレゼンテーションのスキルが向上してきたし、ほとんどの教員が科研費を積極的に申請するようになった」(大阪府立大学の菅野理事・産学官連携機構長)という。
(Wed, 01 Aug 2007)
http://innovation.nikkeibp.co.jp/etb/20070801-00.html