単独で3回開催した静岡大学 発表37件の約半数が共同研究へ、5件がライセンス契約 JSTのサポートあってこそ成立する出会い

出崎 一石(でざき・かずし)静岡大学 知的財産本部 副本部長、学術情報部 産学連携支援課長
 静岡大学(以下「静大」)は、学生数10,745名(大学院含む)、教員数836名、事務職員数342名の中規模の地方大学です。そして、知的財産本部(以下「知財本部」)は、現在、イノベーション共同研究センターの共同研究開発、ベンチャー経営支援、未踏技術開発の各部門、産学連携担当の事務部門と一体的に活動を行っており、総勢30数名の組織です。非常勤の知財マネージャー9名から始終助言指導を受けていますが、知財本部本体の常勤メンバーは、知財コーディネーター3名、知財事務部員4名の比較的コンパクトな人員体制です。
平成15年に文部科学省の大学知的財産本部整備事業を受託して、平成16年に法人化する直前に知財本部の実体的体制を固めましたが、その当時の考えでは、大学の知財本部のコーディネータは、出願のために教員の相談に乗って明細書案文を作成することが仕事であり、ライセンシングはTLOの仕事と考えられていました。
実際に、大学法人化以降に学内研究者への特許出願の働きかけを熱心に行ってきたことと、それまで個人的に産学連携を行っていた教員が、知財本部の機能に期待し特許事務所費用などの出願費用を頼るようになり、平成16年度は約70件、平成17年度は約100件の出願を行うことになりました。ただし、今後は、量より質のためにこれを半分以下に絞りこんでいくことになります。
このような状況でしたので、特許や試料サンプル(研究成果有体物)の提供などの知財権にかかわる実施許諾や譲渡のためにオーソドックスな方法でライセンシングを行うための人員を配置することができませんでした。例えば、近隣の企業を訪問しそのニーズをお聞きしたり、大学保有特許の宣伝を行うこともままならない状態でした。さらに、パテントマップや特許ポートフォリオを作成するための原資や人員も割くことができませんでした。また、連携しているTLOは自己保有ではない大学帰属の特許のライセンシングには消極的であり、積極的な協力が得られない状態でしたので、結局、知財本部が自らライセンシングの方策を考えるしかなかったのです。そして、このことは現在もあまり変わっていません。
産学官ジャーナル 2007年8月号<抜粋>