メモ

File No. 536-002
日本視察団報告集(Carnets du Voyage d'etudes au Japon)
フランス: 科学技術高等調査院(Institut des Hautes Etudes pour la Science et
la Technologie(IHEST))
2008年 9月

◇日本人の科学技術に対する認識
1) 日本人は「技術」と「科学」とを区別しない
 ・日本での現地視察では、科学技術の認識に関して我々とは非常に異なる社会に
直面した。(日本通として知られる)社会学者ジャン=フランソワ・サブレが言う
ように、日本人は「技術」と認識基盤としての「科学」とを区別しない「homo
technophilus」である。
 ・戦後の日本は国の再建のため、基礎研究を犠牲にして技術を優先させた。この
ような産業技術開発の努力が、さまざまの分野で日本を世界一にした。今日でも技
術的新規性を好む傾向は変わらず、政府や産業界はロボット技術やナノ技術に相当
額の資金投入を行っている。
2) 日本は開発の手段としての「科学」に熱意を失ったわけではない
 ・1990年代の危機を、1945年以降に始まった技術開発サイクルの終わりと位置づ
け、これまで依存してきたモデルを見直し、科学と技術の重要な特性を確実に定着
させる契機とした。「知」に立脚した新たな経済発展の道を歩むため、巨額資金に
よる大規模プロジェクトの実施、行政、大学、研究開発システムの大規模改革を
行った。
3) 日本のイノベーションは革命的というより実用的
 ・研究開発に国民総生産の3.6%を充てる日本は、世界のトップクラスの位置にあ
る。しかし研究開発の生産性では必ずしもトップクラスではない。基礎研究のレベ
ルは米国に及ばず、日本人出願の特許は応用特許に偏っており、重要度が低く長き
にわたって質より量が優先された。また日本のイノベーションの特徴は革命的とい
うより実用的と言えそうだ。
4) グローバリゼーションへの対応
 ・日本は科学技術を社会計画の中心に据えてグローバリゼーションに対応しよう
としている。