メモ/英国のイノベーションバウチャー制度

英国大学事情 by山田直氏 http://scienceportal.jp/

中小企業イノベーション・バウチャー制度(SME Innovation Voucher Scheme)
2007年、工学・自然科学研究会議(EPSRC)、経済社会研究会議(ESRC)及びインングランド中西部の地域開発エージェンシー(Advantage West Midlands)は共同で、中小企業向けイノベーション・バウチャー制度、「Innovation Delivers Expansion(INDEX)」を発足した。

【概要】
イングランド中西部地域の80社の中小企業(従業員数最大250名まで)に、同地域の13の大学にて、イノベーション能力を改善するための相談を受けられるように、一社当たり3,000ポンド(63万円)の無料相談バウチャーInnovation Voucher」を支給する。
・2007年7月には、パイロット・スキームの第1次公募に応じた企業の中から無作為に抽出された40社にバウチャーが支給され、2008年春には、第2次公募の40社にバウチャーが支給される予定である。

【参加大学(13大学)】
・Aston University(幹事大学) ・University of Warwick ・Keele University
・Coventry University ・Harper Adams University College
・University of Worcester ・Open University ・UCE Birmingham
・University of Wolverhampton ・Staffordshire University
・Newman College of Higher Education ・University of Birmingham
・College of Food, Tourism and Creative Studies,

【対象業種】
・エネルギー ・先端材料 ・医療技術 ・自動車・輸送
・デジタル・メディア ・加工産業 ・航空/防衛 ・建設、水、環境
・輸送システム ・製造 ・エレクトロニクス ・ヘルスケア
・ソフトウェア、メディア、コミュニケーションズ

【他国の事例】
同様の制度は既にオランダとアイルランド共和国にて実施されており、成果を挙げている。

・オランダ
オランダ経済省(Dutch Ministry of Economic Affairs)のイノベーション・エージェンシー(Senter Novem)は、2004年と2005年において、1,100社の中小企業にそれぞれ7,500ユーロ相当(120万円)のイノベーション・バウチャーを支給した。このバウチャーによる助成は、中小企業が今まで経験したことのない、大学等の公的研究機関や研究重視の大企業との連携を促進した。なお、1,100社中800社が現在でも大学等との連携を継続しているとしている、としている。オランダ政府は、この成功を受け、2006年度より3年間で6,000万ユーロ(96億円)の予算で、当バウチャー制度を継続している。

アイルランド
アイルランドは2007年に同様のバウチャー制度を導入し、第1次として200社の中小企業にバウチャーを支給した。

(参考資料:
http://www.esrcsocietytoday.ac.uk/ESRCInfoCentre/KnowledgeExch/SMEVoucher.aspx?
http://www.aston.ac.uk/from-business/business-services/bpu/services/innovationvoucherscheme.jsp)

【6. 筆者コメント】
オランダにて先行して成功を収めているとされる、中小企業と大学との連携促進策の「イノベーション・バウチャー」制度も画期的な試みと思われる。大学の敷居が高く、また高いコンサルタント料がかかるのではないかとの不安から、今まで一度も大学との連携を考えたことのない中小企業が、無料のバウチャーを支給されることによって、大学の専門家に相談してみようという気になる可能性がある。これによって、将来性のある新たな中小企業を発掘する狙いである。
2008年3月、英国政府は「Innovation Nation」と題する白書を発表した。その中でも、この「イノベーション・バウチャー」制度をイングランド地方全域に拡大し、毎年、500社の中小企業にバウチャーを支給するとしている。2011年までには、毎年1,000社への支給を計画している。
(参考資料:「The Race to the Top:A review of Government’s Science and
Innovation Policies」by Lord Sainsbury of Turville, October 2007)