参考情報/英国ライフサイエンス・スーパークラスター

デイリーウォッチャーFile No. 850-002
「ライフサイエンス・スーパークラスター」計画を発表
Life Sciences Super Cluster Announced as Support for Life Sciences is
Bolstered
2010年 1月26日

1月26日、英国政府は、新たなライフサイエンス・スーパークラスター(UK Life
Science Super Cluster)に関する計画を発表した。政府は100万ポンドを投資して
これを支援する。
以下は報道発表の概要。
このスーパークラスターは、今年の下半期に稼働予定で、慢性疾患に苦しむ人々を
助けるのに必要な次世代の医薬品や技術の実現を推進することが期待されてお
り、ぜんそくや関節リウマチなどの疾病を中心に、免疫学と炎症の分野で試験的な
運営が始められる。
その中心となるのが、「治療能力クラスター(Therapeutic Capability
Clusters)」の設立である。これは、各分野における国内のトップ・レベルの研究
にとって、あらゆるニーズが満たされる「ワンストップショップ」となる。学術界
とNHSの研究機能がここに集結し、産業界と協力し、また英国の専門技能を利用し
て、初期段階の臨床開発と実験医学に取り組む。
今回の発表は、英国のライフサイエンスにとって「行動の1年」を締めくくるものと
いえる。

2009年7月、ライフサイエンス庁(OLS)※が発表した「ライフサイエンス計画(Life
Science Blueprint)」では、英国の事業環境の改革を目指した野心的かつ包括的な
一連の措置が定められているが、この計画の発表から6カ月間に、以下のような数々
の措置が講じられてきた。
○パテントボックス(Patent Box)
 2013年4月以降、特許関連の収入への法人税率を10%とする。これにより、イノ
ベーション活動への投資や、英国に拠点を置くことについて、企業のインセンティ
ブが増加すると期待される。政府は、2011年度財政法案に間に合うよう、このボッ
クスの詳細な設計について企業と協議する予定である。
○RegenMedプログラム
 「RegenMed」は技術戦略委員会(Technology Strategy Board:TSB)が管理する
2,150万ポンド規模のプログラムで、英国の成長産業であり、戦略的にも重要な再生
医療産業を支援する。2009年にTSBが実施した2回のコンペには40社以上の企業が参
加した。これは2010年も実施される予定である。
イノベーション・パス(Innovation Pass)
 効果が期待できる承認薬を、患者が早期に利用できるようにするイニシアティ
ブ。この3年間にわたるイニシアティブに関する協議は、2009年11月に開始され
た。2010年4月からは、1年間の試行的取り組み(one-year pilot)がスタートす
る。これに投入される資金は2,500万ポンド。

マンデルソン卿(ビジネス・イノベーション・技能担当大臣)の談話
「ライフサイエンス産業は、英国が強みとし、今後成長する可能性を秘めたハイテ
ク・ハイバリュー産業である。政府は、すでにライフサイエンスを支援するための
現実的な措置を講じる姿勢を示しており、このことが投資決定にも影響を及ぼし始
めているが、これはまだ始まりにすぎない。この勢いを維持し、今後も引き続き英
国のライフサイエンスが成長するための環境を構築したい」
アンディ・バーナム保健担当大臣(Health Secretary)の談話
「先月私は、今後5年間でNHS(国民保健制度)を見直し、あらゆるレベルを一新し
て、品質も生産性も優れた人間優先型の予防的ケアを実現するという課題に対処す
るためのプランを策定した。NHSは学術界や産業界と協力し、このための新たな治療
法と技術を支援している。経済状況がさらに厳しくなりつつある今、将来に向けて
サービスの質と生産性を高める際の鍵となるのは、疾病の予防や診断、治療の研究
イノベーションを成功させることである。治療能力クラスターのようなライフサ
イエンス産業との共同イニシアティブ、それにNHSライフサイエンスイ・ノベーショ
ン実施委員会(NHS Life Science Innovation Delivery Board)は、こうした課題
に対処するための革新的な方法を示すことだろう」
ドレイソン卿(科学・イノベーション担当大臣)の談話
「ライフサイエンスがその広範な経済公約を実現するには、NHSを経済成長の原動
力、そして最良の医療を必要な時に無償で提供するための原動力とする必要があ
る。ライフサイエンス庁は、これを実現すべく支援を続けているが、まだなすべき
ことは山積している」

[文責:JSTパリ事務所]