メモ/山本さんの意見

総合科学技術会議 基本政策専門調査会
研究開発システムワーキンググループ(第1回) 平成22年2月3日 議事録より

○山本委員 私は日ごろ産学連携をやっているので、研究者ではないが、大学と産業
界を橋渡しをしていて感じているのは、まず今は日本の大学の技術は海外のパテン
ト・アグリゲーターと呼ばれているところがものすごく買いあさっているという状
況である。大変である。東京大学にも、1件80万で捨てる特許でいいので買い取る
というのを非常に多くやってくると。そういった意味では、実は研究能力はやはり
高いのだろうなということはまず感じている。
 研究開発の国際競争力を高めるときに必ず観点として入れていただいたの
が、トップアップをするのか、ボトムアップをするのかという議論だと思う。限ら
れた資金、資源で研究に投資をしなければいけないときに、実は産学連携の観点で
言うと、世界中、アメリカもイギリスもほかのヨーロッパの国も含めて、産学連携
で成功している大学というのはもう上位校ばかりである。基礎がしっかりしている
ところばかりというのと、その上位校の中でも、例えばスタンフォード大学
も、コロンビアでも、オックスフォードでもそうだが、上位10%の技術が全体の
90%のロイヤリティを生んでいるというのが実態であり、そういった意味では効率
的に競争力を上げるためにはやはりトップアップのほうが、これを言うと結構嫌わ
れるが、実際にはそちらのほうが効率的ではないかと私は感じている。
 あと、例えばこれに沿って言えば、国立研究所とか独立行政法人の位置づけとい
うのもかなり諸外国は戦略的で、例えばオランダの国立研究所であるTNOという
のは、TNOの上にTNOホールディングスというのがあって、国策として今はも
うからないが、国としては持っておきたい会社というのをTNOホールディング
ス、日本で言えば産総研ホールディングス、あるいは理研ホールディングスという
ところが60%出資して、民間に40%出資をさせて、将来的に必要になるであろうと
いう会社をどんどん何十社もつくっている。
 例えば、遺伝子組換え食品だけをやる会社でキージーンという会社がある。そう
いう会社があると、これは将来モンサントとかそういったところに、食料問題が
やってきたときに、すべて国として対抗できないようではまずいであろうというこ
とで、今はもうからないがやっているわけである。
 何が起こっているかというと、日本では遺伝子組換え食品を事業化する会社はな
いので、日本の大学の遺伝子組換え食品の技術は全部キージーンに行っているとい
うのが実態である。そうすると、例えば日本の国立研究所あるいは独立行政法人
そういう会社を持つといったような国策として、そういった自由度は今はないと思
うので、そこをどう考えていくのか。
 もっと言えば、例えばTNOというのは、大学と産業界の間という位置づけを完
全に行っていて、TNOは基礎はやらないと、基礎は大学でやるという位置づけに
しているわけだが、そこの区分けの部分も非常に明確であると。
 あと、イギリスのMRC、イギリス版のNIHもあるが、ここもやっぱり
MRCTという会社を設立していて、世界中の大学の新規の抗体を彼らがヒト化抗
体、薬にするときに人間に効く、マウスで実験しただけではヒトに効くかどうかわ
からないので、ヒト化抗体というのをつくるが、これは各大学ではそれをつくって
も論文にもならないし、お金も数百万円かかるし、だれにやらせるのかというマン
パワーの問題もあり、これは今、日本で言えば、東大、京大、阪大といったところ
の抗体を彼らがヒト化抗体をつくってあげると、それを東大でライセンスをしてい
いと、そのかわりロイヤリティは半分くださいというような戦略を持ってきてい
る。これなんかは理研でできないものだろうかというようなことを私は理研の方に
申し上げたことがある。日本中の大学の抗体を集めるだけで、多分かなり世界的に
競争優位のある技術ができるわけで、そういったときにやはりMRCがMRCTと
いう会社をつくっているように、理研がその専属の会社を持てるかどうかとい
う、ここの規制緩和といったところも検討すべきではないかと思う。
 あともう1点は橋本先生がおっしゃったことだが、日本の場合は研究者が国の予
算申請から、極端な話、私たちがお伺いしたときにはコーヒーを入れるところまで
全部やってくれるみたいなところがあり、やはり研究のマネジメントを行ってくれ
るリサーチ・アドミニストレーターというのがアメリカには数多くいるわけだ
が、この人は研究をやるわけではなく、研究のマネジメント、あるいは国への予算
申請、そういったことをやっていく人たちで、実は私たちの会社でもそれを導入す
ることを今検討しているわけだが、結局これはどうしても人件費の問題とかがあ
り、これを何とかできないものだろうかというようなことは考えている。要する
に、研究を支える人材、研究者ではなく。